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声明「平坦ではない依存症の回復を見守る社会づくりを目指して」

2019年11月11日 協会声明

平坦ではない依存症の回復を見守る社会づくりを目指して

令和元年11月6日(水)、薬物依存の回復に取り組んでいた田代まさし氏が逮捕されたとの報道がありました。当協会は11月16日、17日に石川県金沢市で開催予定の第34回全国研究大会に登壇者としてお呼びしていたため、今回の報道を踏まえて、依存症を支援するソーシャルワーカーの団体として声明を発表いたします。

薬物依存症に限らず、依存症からの回復は、専門治療につながることや、リハビリ施設に入所するだけですぐに達成されることではありません。「やめたい」という思いと、「使いたい」という病的な欲求の間で揺れ動く気持ちの中で、「今日一日は使わない選択」をし、セルフヘルプグループなどで出会う仲間ともに日々を過ごします。こうした回復に取り組む日々においての再使用は十分に起こりうることであり、そのことを「失敗」ととらえると、回復途上の依存症者は正直に再使用を支援者や仲間と話すことや、大切な「使用に至った状況の振り返り」などの機会を逸してしまいます。回復の軌跡は多様であり、最初の治療や支援で回復を続ける人もありますが、多くの方が再発と安定を繰り返しながら、少しずつ薬物を必要としない生活習慣に変わっていくことが回復途上の姿なのです。

私たちが大切にしたいことは、依存症からの回復、薬物を使わない自分らしい生き方の獲得は十分に可能であるという信念のもとに、依存症に苦しむ当事者や家族が治療や支援にアクセスできるように関わることです。薬物依存症者に提供されるべきは「処罰ではなく支援」であると私たちは確信しています。

各種報道や世論からは、「周囲の期待を裏切った」「意志が弱い」といった田代さんを非難する声も聞かれます。回復のプロセスを歩む最中の当事者がこのような報道を見聞きすると、「自分も正直に話すと責められてしまう」と感じて、支援者や仲間とつながらずに孤立するようなメッセージが送られてしまうのではないかと危惧しています。一方で、田代さんの今までの啓発活動の成果もあり「やめ続けることの難しさ」も少しずつ浸透していることも実感としてあります。

ソーシャルワーカーの団体として、こうした「平坦ではない」依存症からの回復を信じ、見守り、回復を妨げない温かい社会をつくるために、支援者の協働や啓発活動などの社会への働きかけにこれからも取り組んでいきたいと考えています。

 

一般社団法人日本アルコール関連問題ソーシャルワーカー協会

会長 岡﨑 直人

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