厚生労働省や麻薬・覚せい剤乱用防止センターが作成した「ダメ。ゼッタイ。普及運動」のポスターは、「薬物乱用の行き先をご存知ですか?」と問いかけ、注射器の先が示すどの方向にも「破滅」しかないことを強く訴えている。
しかし覚せい剤などの薬物使用の行き先が「破滅」しかないというのは、事実に反している。何度かの薬物乱用があっても、薬物を使わない生活に立ち戻ることは可能であり、また依存症というレベルに至ったとしても、そこから回復することが可能であることは、ダルクやNAなどの実践が示している。
薬物乱用の予防のためであっても事実と反するキャンペーンを、公費を使って実施することを容認することはできない。また覚せい剤などの薬物使用の結果が破滅しかないとすることは、薬物を使用してしまった本人やその家族の回復への努力や希望を否定するものであり、薬物依存症からの回復そのものを否定するものにほかならない。
世界的な状況をみると、薬物使用、所持などを非犯罪化し、薬物使用人口を減少させたポルトガルの実践など、薬物使用を非難、処罰しない政策が成果をあげている。
私たち日本アルコール関連問題ソーシャルワーカー協会は、アルコールはもとより薬物依存症などのアディクションからの回復のための支援を行うソーシャルワーカーの団体であり、このような薬物依存症者への誤解と偏見を助長するようなポスターの掲示を許すことはできない。ポスターの掲示を中止し、すべてを破棄するとともに、「ダメ。ゼッタイ。普及運動」の在り方そのものを見直すように強く求めるものである。
2019年8月
発信者
一般社団法人
日本アルコール関連問題ソーシャルワーカー協会
会長 岡﨑 直人